API Gateway Rest API StageにおけるAWS WAFの設定について

このブログシリーズ 「クラウドセキュリティ 実践集」 では、一般的なセキュリティ課題を取り上げ、「なぜ危険なのか?」 というリスクの解説から、「どうやって直すのか?」 という具体的な修復手順(コンソール、AWS CLI、Terraformなど)まで、分かりやすく解説します。
今回は、API Gateway REST APIステージで AWS WAF (Web Application Firewall) が関連付けられていない 状態について、そのリスクと対策を解説します。

ポリシーの説明
Amazon API Gateway の Security Hub コントロール – AWS Security Hub
[APIGateway.4] API Gateway は、WAF ウェブ ACL に関連付けられている必要があります
このコントロールは、API Gateway ステージが AWS WAF ウェブアクセスコントロールリスト (ACL) を使用しているかどうかをチェックします。 AWS WAF ウェブ ACL が REST API Gateway ステージにアタッチされていない場合、このコントロールは失敗します。
リスク
Amazon API Gatewayは、APIを公開するためのフルマネージドサービスです。しかし、WAFが関連付けられていない場合、APIは一般的なWeb攻撃に対して脆弱になり、以下のような深刻なセキュリティリスクが発生します。
- OWASP Top 10の脅威への露出: WAFは、SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング (XSS)、悪意のあるボット、DDoS攻撃、その他の一般的なWeb脆弱性(OWASP Top 10に挙げられるような脅威)からAPIを保護するために不可欠です。WAFがなければ、これらの攻撃はAPI Gatewayを通過し、バックエンドアプリケーションやデータに直接到達する可能性があります。
- 不正アクセスとデータ漏洩: WAFは、不正なリクエストパターンを検出し、悪意のあるトラフィックをブロックすることで、APIへの不正アクセスを防ぎます。WAFがない場合、攻撃者はブルートフォース攻撃やクレデンシャルスタッフィングなどを試み、認証情報を窃取したり、機密データを不正に取得したりする可能性があります。
- DDoS攻撃によるサービス停止: WAFは、ボットネットによる大量のリクエストや特定のIPアドレスからの異常なトラフィックパターンを検出し、ブロックすることで、分散型サービス拒否 (DDoS) 攻撃からAPIを保護します。WAFがない場合、DDoS攻撃によってAPIが過負荷になり、正当なユーザーがサービスを利用できなくなる可能性があります。
- リソースの過剰消費とコスト増: 悪意のあるトラフィックがWAFによってブロックされない場合、それがバックエンドアプリケーションまで到達し、余分な処理リソースを消費する可能性があります。これにより、バックエンドインフラストラクチャのスケーリングが必要になったり、不必要なリソース使用量によってコストが増加したりする可能性があります。
対策
API GatewayのREST APIステージにAWS WAFウェブACLを関連付けることは、APIのセキュリティを大幅に強化し、一般的なWeb攻撃から保護するための非常に重要なベストプラクティスです。
- ウェブACL (Web ACL) の作成: AWS WAFで、API Gatewayディストリビューションを保護するためのウェブACLを作成します。このウェブACLには、SQLインジェクション、XSS、IPアドレスの評価、レートベースルールなど、一般的な脅威から保護するためのルールを設定します。AWS管理ルールセットの利用を検討してください。
- API Gatewayステージとの関連付け: 作成したウェブACLを、保護したいAPI Gateway REST APIの特定のステージ(例:
prod
,dev
など)に関連付けます。WAFは、関連付けられたステージへのすべてのリクエストを検査し、設定されたルールに基づいてアクションを実行します。 - レートベースルールの設定: 特定の期間内にAPIへのリクエスト数が異常に多いIPアドレスを自動的にブロックするレートベースルールを設定することを検討してください。これは、DDoS攻撃やブルートフォース攻撃に対する効果的な防御策となります。
- IP制限ルールの追加: 特定の国や既知の悪意のあるIPアドレスからのアクセスをブロックするIPセットルールを追加することを検討してください。逆に、管理ネットワークからのアクセスのみを許可したい場合にも利用できます。
- 監視とアラート: WAFのメトリクス(ブロックされたリクエスト、許可されたリクエストなど)をAmazon CloudWatchで監視し、異常なアクティビティを検知した場合にアラートが発報されるように設定します。これにより、攻撃を早期に把握し、対応できるようになります。
- 定期的なルールセットのレビューと更新: API GatewayとWAFのルールセットは、新しい脅威やアプリケーションの変更に合わせて定期的にレビューし、更新します。AWS WAFのマネージドルールは、AWSセキュリティチームによって継続的に更新されるため、これを活用することを強く推奨します。
修復方法
AWSコンソールでの修復手順
AWSコンソールを使用して、API Gateway REST APIステージにWAFウェブACLを関連付けます。
前提:
- 保護したいAPI Gateway REST APIとステージが既に存在していること。
- AWS WAFで、API Gatewayに関連付けるためのウェブACLが既に作成されていること。ウェブACLのリージョンは、API Gatewayのデプロイリージョンと一致している必要があります。
- API Gatewayサービスへ移動: AWSコンソールにログインし、API Gateway サービスを開きます。
- REST APIの選択: 左側のナビゲーションペインで「API」の下にある「REST API」を選択し、WAFを関連付けたいREST APIを選択します。
- ステージの選択: 左側のナビゲーションペインで「ステージ」を選択し、WAFを関連付けたいステージ(例:
prod
,dev
など)を選択します。 - WAFウェブACLの関連付け: ステージの詳細画面の「設定」タブ(または画面下部の「ウェブ ACL」セクション)を見つけます。
- 「ウェブ ACL」のドロップダウンメニューから、関連付けたいAWS WAFウェブACLを選択します。「保存」または「変更を保存」をクリックします。 API Gatewayのデプロイが自動的に行われ、WAFウェブACLがステージに関連付けられます。これには数分かかる場合があります。
- WAFコンソールでの確認 (オプション): AWS WAFサービスに移動し、関連付けたウェブACLの詳細ページで、「関連付けられた AWS リソース」タブを確認すると、API Gatewayステージがリストされているはずです。

Terraformでの修復手順
TerraformでAPI Gateway REST APIステージにWAFウェブACLを関連付けるには、aws_wafv2_web_acl_association
リソースを使用します。
前提:
- API Gateway REST APIとステージが既にTerraformで定義されているか、データソースとして参照されていること。
- AWS WAFウェブACLが既にTerraformで定義されているか、データソースとして参照されていること。
# (例) 既存のAPI Gateway REST APIとステージを参照
data "aws_api_gateway_rest_api" "my_api" {
name = "MyExampleApi" # あなたのAPI Gateway REST API名に置き換え
}
data "aws_api_gateway_stage" "my_api_stage" {
rest_api_id = data.aws_api_gateway_rest_api.my_api.id
stage_name = "prod" # あなたのステージ名に置き換え
}
# (例) 既存のAWS WAFv2 Web ACLを参照
# Web ACLはAPI Gatewayと同一リージョンに作成されている必要があります。
data "aws_wafv2_web_acl" "example_web_acl" {
name = "MyApiGatewayWebACL" # あなたのWeb ACL名に置き換え
scope = "REGIONAL" # API GatewayはREGIONALスコープを使用
}
# API Gateway REST APIステージとWAFウェブACLの関連付け
resource "aws_wafv2_web_acl_association" "api_gateway_waf_association" {
resource_arn = data.aws_api_gateway_stage.my_api_stage.arn
web_acl_arn = data.aws_wafv2_web_acl.example_web_acl.arn
}
# (オプション) もしAPI Gateway REST API、ステージ、WAF Web ACLをTerraformで新規作成する場合の例
/*
# API Gateway REST API
resource "aws_api_gateway_rest_api" "new_api" {
name = "NewSecureApi"
description = "New API protected by WAF"
}
# API Gateway リソースとメソッド、デプロイ、ステージ
resource "aws_api_gateway_resource" "new_api_resource" {
rest_api_id = aws_api_gateway_rest_api.new_api.id
parent_id = aws_api_gateway_rest_api.new_api.root_resource_id
path_part = "test"
}
resource "aws_api_gateway_method" "new_api_method" {
rest_api_id = aws_api_gateway_rest_api.new_api.id
resource_id = aws_api_gateway_resource.new_api_resource.id
http_method = "GET"
authorization = "NONE"
}
resource "aws_api_gateway_integration" "new_api_integration" {
rest_api_id = aws_api_gateway_rest_api.new_api.id
resource_id = aws_api_gateway_resource.new_api_resource.id
http_method = aws_api_gateway_method.new_api_method.http_method
type = "MOCK"
integration_http_method = "GET"
}
resource "aws_api_gateway_deployment" "new_api_deployment" {
rest_api_id = aws_api_gateway_rest_api.new_api.id
triggers = {
redeployment = sha1(jsonencode([
aws_api_gateway_resource.new_api_resource.id,
aws_api_gateway_method.new_api_method.id,
aws_api_gateway_integration.new_api_integration.id,
]))
}
lifecycle {
create_before_destroy = true
}
}
resource "aws_api_gateway_stage" "new_api_stage" {
deployment_id = aws_api_gateway_deployment.new_api_deployment.id
rest_api_id = aws_api_gateway_rest_api.new_api.id
stage_name = "prod"
}
# AWS WAFv2 Web ACLの作成例 (REGIONALスコープ)
resource "aws_wafv2_web_acl" "new_web_acl" {
name = "NewApiGatewayWebACL"
scope = "REGIONAL"
description = "Web ACL for new API Gateway"
default_action {
allow {}
}
visibility_config {
cloudwatch_metrics_enabled = true
metric_name = "NewApiGatewayWebACL"
sampled_requests_enabled = true
}
rules {
name = "CRSLimitRule"
priority = 10
action {
block {}
}
statement {
managed_rule_group_statement {
vendor_name = "AWS"
name = "AWSManagedRulesCommonRuleSet"
# override_action {
# none {}
# }
}
}
visibility_config {
cloudwatch_metrics_enabled = true
metric_name = "CRSLimitRule"
sampled_requests_enabled = true
}
}
tags = {
Environment = "Development"
}
}
# 新規作成したAPI GatewayステージとWAFウェブACLの関連付け
resource "aws_wafv2_web_acl_association" "new_api_gateway_waf_association" {
resource_arn = aws_api_gateway_stage.new_api_stage.arn
web_acl_arn = aws_wafv2_web_acl.new_web_acl.arn
}
*/
上記のTerraformコードでは、aws_wafv2_web_acl_association
リソースを使用して、既存のAPI Gatewayステージと既存のAWS WAFウェブACLを関連付けています。
resource_arn
: API GatewayステージのARNを指定します。これは、data.aws_api_gateway_stage.my_api_stage.arn
で取得できます。web_acl_arn
: 関連付けるWAFウェブACLのARNを指定します。これは、data.aws_wafv2_web_acl.example_web_acl.arn
で取得できます。
コメントアウトされた部分は、もしAPI GatewayやWAFウェブACLをTerraformで新規作成する場合の例です。必要に応じて参考にしてください。
MyExampleApi
、prod
、MyApiGatewayWebACL
などのプレースホルダーは、実際の環境に合わせて修正してください。
最後に
この記事では、API Gateway REST APIステージにAWS WAFウェブACLを関連付けることの重要性について解説しました。WAFを導入することで、APIを一般的なWeb攻撃から保護し、セキュリティ体制を大幅に強化できます。これは、APIを公開する上での必須のセキュリティ対策と言えるでしょう。
貴社のAPI Gatewayでは、WAFが適切に関連付けられていますか?この機会にぜひ設定を確認・強化してみてください。
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最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が皆さんの役に立てば幸いです。