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CAASMとは?資産情報を統合する役割とASMとの違い

セキュリティ解説Securify編集部読了目安 約 11 分
目次26項目
CAASMとは?資産情報を統合する役割とASMとの違い

はじめに:「見えない資産」が攻撃を招く

「自社にいくつのIT資産があるか」——この問いに自信を持って答えることは、多くの組織にとって簡単ではありません。

台帳に載っていないシャドーIT、管理されていないクラウドインスタンス、忘れ去られた開発環境などは、把握されないまま攻撃対象領域を広げる原因になります。

こうした「資産可視性の欠如」に対応するために、Gartnerが提唱したのがCAASM(Cyber Asset Attack Surface Management:サイバー資産攻撃対象領域管理)という概念です。CAASMは、複数の管理・セキュリティツールが持つ資産情報を統合し、資産の把握や対策状況の確認に利用する領域です。たとえば、クラウド台帳、端末管理、脆弱性管理のデータをつなぎ、どの端末に管理ツールが入っていないかを調べる用途があります。AxoniusのCAASM紹介は、こうした製品の一例です。

本記事では、Gartnerの定義に基づいてCAASMを解説し、混同されがちなASM、EASM、CSPMとの違いを明らかにします。そのうえで、CAASMの考え方を実現するアプローチと、導入時に確認したい運用上のポイントについて考察します。


CAASM(Cyber Asset Attack Surface Management)とは何か?

Gartnerによる公式定義

Gartnerは、CAASMを以下のように定義しています(出典:参考文献1)。

「CAASMは、セキュリティチームが資産の可視性とエクスポージャーの課題を克服することを可能にする新興技術である。組織は主にAPI連携を通じて既存ツールからデータを収集し、すべての資産(内部・外部)を可視化し、統合データに対してクエリを実行し、脆弱性やセキュリティコントロールのギャップの範囲を特定し、問題を修復することを可能にする。」

この定義から読み取れるCAASMの本質は以下の3点です。

CAASMの3つの本質的特徴

1. 「API連携による既存ツールからのデータ統合」が核心

CAASMは、自らネットワークをスキャンすることを中心としたツールではありません。すでに組織に導入されているセキュリティツールやIT管理ツールから主にAPI連携でデータを収集し、統合・正規化する「データ集約プラットフォーム」です。

データソースとなる既存ツールの例:

  • CMDB(構成管理データベース)
  • 脆弱性スキャナ
  • EDR(エンドポイント検出・対応)
  • EASM(外部アタックサーフェス管理)
  • CSPM(クラウドセキュリティ態勢管理)
  • IAM(ID・アクセス管理)
  • クラウドプラットフォームAPI(AWS、Azure、GCP)

2. 「Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)」の構築

セキュリティチームが抱える大きな課題の一つは、資産情報がサイロ化していることです。CMDBには一部の資産情報があり、脆弱性スキャナには別の情報があり、クラウドコンソールにはまた別の情報がある——これらが連携していないため、「全体像」を把握できません。

CAASMは、これらの分散したデータを1つのプラットフォームに統合し、セキュリティ分析のための統一されたデータ基盤を提供します。

3. セキュリティ用途に特化したクエリと分析

従来のCMDB(構成管理データベース)も資産管理を行いますが、その目的はITSM(ITサービス管理)、つまりライフサイクル管理や財務管理です。

CAASMは、セキュリティ用途を前提に設計されています。具体的には:

  • 「EDRエージェントがインストールされていない資産はどれか?」
  • 「外部公開されており、かつ脆弱性が存在する資産はどれか?」
  • 「特定のCVEに該当する資産は何台あるか?」

といったセキュリティ観点のクエリを実行し、ギャップの特定と修復の優先順位付けを行います。


混同されやすい用語を整理:ASM・EASM・CAASM・CSPMの違い

CAASMを理解するうえで、関連する概念との違いを正確に把握することが重要です。

用語の関係性

Gartnerは、ASM(Attack Surface Management)を包括的な概念として位置づけ、その下に以下の3つの技術領域を定義しています(出典:参考文献2)。

略称

正式名称

概要

EASM

External Attack Surface Management

インターネット上に公開された外部資産を攻撃者の視点で発見・監視

CAASM

Cyber Asset Attack Surface Management

既存ツールからAPI連携でデータを統合し、内部・外部資産を横断して可視化

DRPS

Digital Risk Protection Services

ダークウェブやSNS等での自社情報流出・ブランド侵害を監視

EASMとCAASMのアプローチの違いについて

観点

EASM

CAASM

視点

Outside-In(外部から内部を見る)

360°(内部・外部両方を統合)

手法

外部からの探索(外部から観測できる情報を起点に資産を発見)

受動的データ収集(既存ツールからAPI連携)

対象

外部公開資産のみ

内部資産+外部資産

発見対象

未知の外部資産(シャドーIT)

既知資産の横断的な可視化とギャップ特定

データソース

独自の探索・スキャン結果

CMDB、EDR、脆弱性スキャナ、EASMも含む

重要なポイント:EASMはCAASMの「データフィード」の1つ

EASMが発見した外部資産情報は、CAASMに取り込まれ、内部の資産情報と統合されます。つまり、EASMとCAASMは競合するものではなく、補完関係にあります。外から見える資産と、社内ツールに登録された資産の差分を調べる際には、両方の情報が役立ちます。

一方、連携元が把握していない資産を、データ統合だけで発見できるとは限りません。CAASMを評価する際は、「連携できるツールが多い」ことと「自社の管理外資産まで把握できる」ことを分けて考えます。

CSPM vs CAASM:カバー領域の違い

観点

CSPM

CAASM

目的

クラウド環境の設定不備・コンプライアンス違反を検出

あらゆる資産(クラウド含む)の横断的な可視化

対象

AWS、Azure、GCPなどのクラウドリソース

クラウド+オンプレミス+エンドポイント+ユーザー等

手法

クラウドAPIに直接接続して設定を監視

既存ツール(CSPMを含む)からデータを統合

重要なポイント:CSPMもCAASMの「データフィード」の1つ

CSPMが検出したクラウドの設定不備情報は、CAASMに取り込まれ、他の資産情報と相関分析されます。たとえば「設定不備があるクラウドリソースのうち、外部からアクセス可能なものはどれか」といった分析ができるようになります。


CAASMが必要とされる背景:なぜ「データ統合」が重要なのか

ツールのサイロ化がもたらす課題

多くの組織では、以下のようなセキュリティツールが個別に導入されています。

  • 外部可視化:EASMツール
  • クラウド監視:CSPMツール
  • エンドポイント保護:EDRツール
  • 脆弱性管理:脆弱性スキャナ
  • 資産管理:CMDB / IT資産管理ツール

問題は、これらが連携せず「サイロ化」していることです。

具体的な課題例:

シナリオ

サイロ化による問題

CAASMによる解決

EASMで外部公開サーバーを発見

そのサーバーにどんな脆弱性があるか不明

脆弱性スキャナのデータと統合し、リスクを把握

CSPMでS3バケットの公開設定を検出

それが本当に外部到達可能か不明

EASMデータと照合し、実際のリスクを評価

脆弱性スキャナで多数の脆弱性を検出

どれを優先すべきか判断困難

資産の重要度、外部公開状況、EDRの有無と相関分析して優先順位付け

CAASMの価値:「点」を「線」でつなぐ

CAASMの価値は、個々のツールが生成する「点」の情報を、「線」でつないで全体像を可視化することにあります。

これにより、以下が可能になります:

  • コンテキストに基づくリスク評価:CVSSスコアだけでなく、「外部公開か」「重要資産か」「保護対策があるか」を総合判断
  • セキュリティギャップの特定:「EDRがインストールされていない資産」「パッチ未適用の公開サーバー」を抽出
  • コンプライアンス対応の効率化:統合された資産データをもとに、監査用の資産一覧や報告資料を作成しやすくなる

データ統合の難しさ:同じ資産かどうかの判断

一方で、データを集めれば自動的に正しい全体像ができるわけではありません。一つのサーバーが、台帳ではホスト名、クラウド側ではリソースID、診断ツールではIPアドレスで記録される場合があります。IPアドレスは再利用されることもあるため、名前やIPの一致だけで統合すると、別の資産を同一視するおそれがあります。

評価時には、自社の実データで重複と誤統合を確認します。情報の出所、最終取得日時、統合の根拠をたどれるかも大切です。古い情報が最新の状態として残っていないか、削除済みの資産がどう扱われるかも確認してください。


CAASMを実現する2つのアプローチ

CAASMの考え方(資産情報の統合と一元管理)を実現するには、大きく分けて2つのアプローチがあります。

アプローチ①:CAASMプラットフォーム+ベストオブブリードツール

概要: 各領域で最適なツールを個別に導入し、CAASMプラットフォームでAPI連携して統合する。

アプローチ①:CAASMプラットフォーム+ベストオブブリードツールの説明画像

メリット:

  • 各領域で最適なツールを選択可能
  • 既存投資を活かせる

デメリット:

  • 複数ベンダーとの契約・運用管理
  • API連携の構築・維持コスト
  • ツール間のデータ形式の差異による統合の複雑さ

アプローチ②:統合セキュリティプラットフォーム

概要: 外部・クラウド・コード・アプリなど複数の可視化機能を1つのプラットフォームで提供し、その範囲の資産情報をまとめて扱う。

アプローチ②:統合セキュリティプラットフォームの説明画像

メリット:

  • プラットフォームに含まれる機能の間では、個別にAPI連携を構築する手間を減らせる
  • 単一ベンダーで運用をまとめやすい
  • 機能間で資産情報を関連づける前提で設計されている場合がある

デメリット:

  • 個々の機能が専門ツールより劣る可能性
  • ベンダーロックイン
  • EDRやCMDBなど、プラットフォーム外の既存ツールが持つ情報を統合するには、別途連携が必要

統合プラットフォームは、CAASMの役割をすべて置き換えるものではありません。既存のEDR・CMDBなどとのデータ統合が必要かどうかを含めて比較します。

どちらを選ぶべきか?

状況

推奨アプローチ

既に多数のセキュリティツールを導入済み

①CAASMプラットフォームで統合

これからセキュリティ基盤を構築

②統合プラットフォームが効率的

大規模組織で各領域に専門チームがいる

①各チームが最適ツールを選択+CAASM統合

中規模組織でリソースが限られる

②統合プラットフォームで運用負荷を軽減


CAASM / 統合プラットフォーム導入のステップ

ステップ1:現状の資産可視性を評価

まず、自組織の現状を把握します。

  • 現在、資産情報はどこに存在しているか?(CMDB、クラウドコンソール、スプレッドシート等)
  • どの程度の資産が「見えていない」可能性があるか?
  • セキュリティチームが資産情報を得るのにどれだけ時間がかかっているか?

あわせて、導入前に次の点を決めておきます。

  • 端末管理、クラウド、診断ツールのうち、どの情報を連携するか
  • それぞれの情報を収集する権限と更新頻度
  • 資産の所有部署・担当者をどの台帳から取得するか
  • データが食い違うときの確認担当と修正方法
  • 管理対象外の資産や例外をどう扱うか

ステップ2:優先すべき可視化領域を決定

すべてを一度に実現しようとすると、アラート過多や運用負荷で失敗しやすくなります。最初から全資産を一度に整理するより、たとえば「公開サーバーの診断漏れを探す」といった具体的な問いを決めると、必要な連携と検証結果を評価しやすくなります。

  • 外部リスクが高い場合:まずEASM / 外部可視化から
  • クラウド移行中の場合:まずCSPM / クラウド可視化から
  • 開発組織が大きい場合:まずSBOM / コード可視化から

ステップ3:段階的に可視化範囲を拡大

1つの領域で運用プロセスが確立したら、次の領域を追加します。

順序の一例:

  1. 外部可視化(ASM):効果が見えやすく、比較的始めやすい
  2. クラウド可視化(CSPM):検出した設定不備を、設定の見直しで修正しやすい
  3. コード可視化(SBOM):開発チームとの連携が必要
  4. アプリ診断(DAST):定期的な診断サイクルの確立

ステップ4:相関分析とプロセスの最適化

複数の可視化レイヤーが揃ったら、相関分析を活用した優先順位付けを行います。

  • 「外部公開×脆弱性あり×保護なし」の資産を最優先で対応
  • 定期的なレビューサイクルの確立
  • 経営層へのリスクレポーティング

まとめ:CAASMの本質を理解し、自組織に最適なアプローチを選ぶ

本記事では、Gartnerの定義に基づいてCAASMを解説しました。

まとめ:CAASMの本質を理解し、自組織に最適なアプローチを選ぶの説明画像

重要なポイント

  1. CAASMは「API連携によるデータ統合プラットフォーム」である
    • 特定の機能を持つことではなく、既存ツールからデータを収集・統合することが本質
  2. EASM・CSPMはCAASMの「データソース」であり、包含関係にはない
    • CAASMはこれらのツールと競合するのではなく、これらからデータを受け取る側
  3. CAASMの考え方を実現するアプローチは複数ある
    • CAASMプラットフォーム+ベストオブブリードツール
    • 複数の機能を最初から1つにまとめた統合セキュリティプラットフォーム(プラットフォーム外のツールとの統合は別途確認)
  4. 重要なのは「ツール」ではなく「資産可視化という目的」
    • どのアプローチを選ぶにせよ、ゴールは「資産の可視化とセキュリティギャップの特定」

今後の展望

Gartnerは、CTEM(Continuous Threat Exposure Management:継続的脅威エクスポージャー管理)という考え方を提唱しており、CAASMはCTEMを支える技術要素の一つとして位置づけられています(出典:参考文献3)。

資産可視化への投資は、単なるコンプライアンス対応ではなく、プロアクティブなセキュリティ体制構築のための基盤です。

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Securifyは、Securify ASMによる公開資産の探索と、Securify IASMによる内部資産の確認を、同じプラットフォームで提供しています。Securify SBOMでは、ASM・CSPMとの連携により、ソフトウェア構成を実際に稼働する資産と関連付けられます。既存のEDRやCMDBとのデータ統合が必要な場合は、連携先や取得したい項目を挙げて、個別に対応範囲を確認してください。

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参考文献・出典

  1. Gartner, “Market Guide for Cyber Asset Attack Surface Management” (2023)
  2. Gartner, “Innovation Insight: Attack Surface Management” (2022)
  3. Gartner, “Hype Cycle for Security Operations” (2023-2024)

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